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扉の奥は入り組んだ迷宮となっていた。
持ってきていたチョークで、地面に線を引き迷わないようにしているが、そうでもなければここで一生を終える程度には複雑な作りをしていた。
時折上り、そしてまた下る。平面にある迷路ならばまだしも、
こうも上下に折れていては今自分がどこにいるかも分からない。
外壁がうすぼんやりと光っているおかげで視界には困らないが、漠然とした距離のようなものは感じていた。
無性に喉が渇きを訴える。
それほど暑いワケでもなく、湿度が高いワケでもない。
この閉鎖的な空間が、神経を疲弊させていっているのだ。
一体……何時間歩いただろう。
チョークの線をたどって一度引き返すことも視野に入れながら、僕は疲労と戦っていた。
足を棒にして歩くと言うが、まさにその通りだ。
ゴールの見えないこの行進は溜まる疲労も段違いだった。
罠のようなものは今は見当たらない。
けれど、いつ来るかと警戒だけは続けておく。
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