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急ぎすぎたせいか、階段で軽く躓いてしまった。
少し冷や汗が出たが、その前に、フッ、と風切り音とともに頭の上をなにかが通過していった。
視線を移すと、壁に矢が突き刺さっている。
「ッ!」
それを皮切りにして、何本もの矢が壁や天井から降ってきた。
見つけた隙間に身体を入れて、かろうじてかわしていく。
しかし、崩落は徐々に迫りつつある。
目印のチョークがなければ、道を間違えた瞬間に命が終わっていた。
右へ左へ、時には階段を上下しながら、飛んでくる矢を避け、落石を防ぎ地上へと向かう。
嫌な汗を掻いている。
ほとんど崩落に追いつかれつつある。
まだか、扉はまだなのか。
思考がグルグルと回りはじめ、動きも鈍くなってくる。
矢はギリギリでかわせているが、徐々にかするようになってきた。
まずいな……これは。
疲れからか視界の縁が黒くなり始める。限界は近いようだ。
踏ん張る体とは裏腹に、意識は遠のこうとしている。
そんな時、切なげな声色が頭に響き渡った。
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