3.乖離(かいり)

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急ぎすぎたせいか、階段で軽く躓いてしまった。 少し冷や汗が出たが、その前に、フッ、と風切り音とともに頭の上をなにかが通過していった。 視線を移すと、壁に矢が突き刺さっている。 「ッ!」 それを皮切りにして、何本もの矢が壁や天井から降ってきた。 見つけた隙間に身体を入れて、かろうじてかわしていく。 しかし、崩落は徐々に迫りつつある。 目印のチョークがなければ、道を間違えた瞬間に命が終わっていた。 右へ左へ、時には階段を上下しながら、飛んでくる矢を避け、落石を防ぎ地上へと向かう。 嫌な汗を掻いている。 ほとんど崩落に追いつかれつつある。 まだか、扉はまだなのか。 思考がグルグルと回りはじめ、動きも鈍くなってくる。 矢はギリギリでかわせているが、徐々にかするようになってきた。 まずいな……これは。 疲れからか視界の縁が黒くなり始める。限界は近いようだ。 踏ん張る体とは裏腹に、意識は遠のこうとしている。 そんな時、切なげな声色が頭に響き渡った。
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