10人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
(・・・力が、入らない?)
脳震盪(のうしんとう)でも起こしているのか、意識はハッキリとしていても立つことができなかった。
足音が聞こえる。重々しく、堅苦しいまでに規則正しい靴の音が。
きっとそれは、忍び寄る死の音なのだろう。
目は閉じない。せめて、その瞬間ぐらいは見届けてやると覚悟を決める。
すると、見開いていた視界が不意に、自然ではない動きで空高く昇った。
それは、生物兵器に触れられたからではなく、『僕』自身が立ち上がった為だった。
(――――――――――え?)
頭が真っ白になる。
僕は、『僕』がそこに立ち上がっているのを、上から見下ろしているのだ。
意識もある。体の感触も確かにあった。
けれど、僕の意思に関係なくそれが動かされてしまう。
まったく、ワケが分からない。
最初のコメントを投稿しよう!