3.乖離(かいり)

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(・・・力が、入らない?) 脳震盪(のうしんとう)でも起こしているのか、意識はハッキリとしていても立つことができなかった。 足音が聞こえる。重々しく、堅苦しいまでに規則正しい靴の音が。 きっとそれは、忍び寄る死の音なのだろう。 目は閉じない。せめて、その瞬間ぐらいは見届けてやると覚悟を決める。 すると、見開いていた視界が不意に、自然ではない動きで空高く昇った。 それは、生物兵器に触れられたからではなく、『僕』自身が立ち上がった為だった。 (――――――――――え?) 頭が真っ白になる。 僕は、『僕』がそこに立ち上がっているのを、上から見下ろしているのだ。 意識もある。体の感触も確かにあった。 けれど、僕の意思に関係なくそれが動かされてしまう。 まったく、ワケが分からない。
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