3.乖離(かいり)

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(……な、何だこれ) 佇む『僕』の体から、広間を埋め尽くすような魔力の奔流がある。 吐き気を催すほどに邪悪で、猛々しい炎の様に濃密な魔力。 生物兵器も、その流れの中で動く事が出来ないでいる。 「…………、…………、……………、……………………!」 微かな囁き。 何かを『僕』が呟いている。 (・・・・・・呪文?) その囁きが終わると、『僕』は視線を生物兵器に固定して――――禍々しい表情で、微かに笑った。 「エクスプロード」 『僕』の呟きと同時に、その手のひらから劫火が放たれる。 燃える。遺跡が、生物兵器が一瞬のうちに燃え尽きる。 まるで炎の壁だった。 ちっぽけな僕の体の何百倍、何千倍もの炎が、何から何まで焼き尽くしていく。 赤黒く染め上げられた視界がひらけた時、残っているのは遺跡の入り口だけだった。 広大な地の一面が黒い焦土と化して、灰の匂いが鼻腔に残る。 僕の意識は、落ちていく様にそこで断ち切られた。
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