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ふと気がつくと、僕の身体は暗闇に浮いていた。
何処まで行っても何も無い空間だった。音も、匂いもなにもない。
ただ押し潰されそうな気配だけが、辺りを埋め尽くしている。
なにかがいる……ワケではない。
だとすれば、この気配はどこから来るものなのだろうか。
これは、夢だ。
自分に言い聞かせるように、そう結論付ける。
――と、僕が固く目を瞑ったときだった、「汝(なんじ)の――に――――」
上とも、下ともつかない、空間全体から響いてくるような声が、僕の耳に確かに届いた。
「誰だ!」
思わずそう叫んでいた。
そして忙しく辺りを見渡す。
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