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僕は右手を前に向ける。どこでもいい、とにかくこの声の主を黙らせるんだ。
「欠落した―――は―――」
「黙れぇええええええええええええッ!!」
ドンッ、と胸の中心に衝撃がある。
それと同時に世界はヒビ割れた。
「――――ッ!」
僕はそこで飛び起きた。
「……今のは……夢?」
なぜだか無性に心がザワついた。このようなことは初めてであった。
息が荒い。嫌な汗も掻いていた。
ベッドのシーツも嫌に熱を帯びている。
(……ん? ベッド?)
疑問とともに、辺りを見渡してみる。微かに見覚えのある場所だった。
(たしかここは、王宮の医務室。どうして僕はこんなとこに寝かされているんだ?)
そうだ。僕はフェン・デルの遺跡で意識を失って――それからの記憶がまったくない。
どこからが夢であったのか、頭が混乱しそうだった。
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