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驚いたような、喜んでいるような、そして泣きそうな顔をして、エリスは突然立ち上がった。
「エリス様?」
と、彼女は俯いてそして――――「バカっ! あんな無茶ばっかりして……死んじゃったらどうするの!」
そんなふうに声を荒げた。
僕はなにも言えなかった。
「三日も目を覚まさないで、うなされてるし。ずっとこのままかと……!」
打ち震えた声が、じくじくと胸に刺さる。
エリスの俯いた頬には、光る物が伝っていた。
「申し訳ございません」
エリスはふい、とそっぽを向いて目元を拭う。
僕に背中を向けて、彼女は医務室のドアのほうに向かった。
「……お父様を呼んでくる。アベル君は、静かに待っていること。お願いね?」
彼女の小さな背中は、ドアの向こうに消えていく。
パタン、とドアの閉まる音が身体に響いた。
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