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「ところで、なぜ僕は王宮に? 確か、フェン・デルの遺跡で意識を失ったはずでしたが」
「……あの日フェンデルの森から、おぞましい魔力が感じられたのでね。
遺跡に兵を派遣して、倒れていた君を連れ帰ってこさせたというワケだ。
なんでも兵に聞いた話では、君は瓦礫の中心に倒れていたらしい」
「瓦礫、ですか……」
「ああ、遺跡は跡形もなく壊れていたようだ」
なるほど、合点がいった。
運が悪ければ……いや、普通だったら死んでいた。
今ならエリスが怒鳴った理由も、少しは理解できる気がする。
「遺跡を壊してしまい、申し訳ありません」
と、僕が頭を下げると国王は、気にすることはないと言った。
そして、国王は懐から古い本を取り出した。
「あ、それは……」
「確かに受け取ったよ。ご苦労だった。これで、君がこの国にとって有益だと示せたわけだ」
取り出したのは古文書だった。倒れていた僕のポーチから、持っていったのだろう。
とりあえず、任務を果たすことはできた。信用こそないだろうが、
それでも味方として扱う建前はできた、と国王は言っているのだ。
国王は続けて、
「それで、だ。私がここに来たのは、古文書の報告のためではない」
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