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階段を下り、玄関を抜けて、訓練場にたどり着いた。
だだっ広い空間が広がっており、兵士達が訓練しているのが見て取れた。
「君がアベル君か?」
と、後から若い男に声をかけられる。
振り返ると若葉の髪をした男が、そこに佇んでいた。
腰には黒鞘に収まった長刀を帯びて、眼光は凍てつくように鋭い。
「クレシス、来てくれたか。では、後は頼むぞ」
「はい、お任せください――父上」
クレシスと呼ばれた男は、深く頭を垂れる。
そうして国王が去っていくのを見送り、僕の方に向き直る。
「さて、はじめようか」
ついてこい、と言わんばかりにその男は足早に移動する。
連れて行かれたのは、室内訓練場の一つだった。
一定の広さは確保されており、下は土の地面となっている。
男は、壁にかかっている幾つかの模造刀の中から無造作に一つを掴んで、こちらに投げ渡す。
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