1人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
それからお母さんは「紗弥加ちゃんも辛いのに取り乱してごめんなさい。少し横になるわね。」と言ってお父さんが付き添って部屋を出て行った。
一人になったあたしは写真に「どうして死んじゃったの英二?」と問いかけてみた。
こんなことになるなら生きてる間にもっともっと話を、会話をすればよかった。
あたしの中の英二はこの写真みたいに笑顔だけど言葉をくれない。
頭の中で再生される声も、聞いたことがある言葉ばかりで新しい言葉はもう増えない。
「すまなかったね、せっかく来てくれたのに。」
お父さんが戻ってきた。
「いえ、あたしこそ…。今日はもう帰ります。」
「そうか。また、遊びに来なさい。私たちにとっては紗弥加ちゃんは娘みたいなものだ。またいつでも家に来てくれて構わないからね。」
嬉しかった。一瞬、本当にお父さんの養女になってしまおうかなんて考えちゃうほど嬉しかった。
そうすれば英二とも本当の家族になれるから。
でも結局、英二の実家には、あの日以来、もう3年も顔を出していない。
最初のコメントを投稿しよう!