5.明日を知らない~Tomorrow never knous~

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「ひどい事だなんて。少なくとも僕は、そうは思ってない。あの頃、紗弥加ちゃんはきっと苦しかったんでしょ?そんな時に僕を頼ってくれた。僕に身を任せてくれた。僕は…。僕は素直に嬉しかった。紗弥加ちゃんが…ずっと好きだったから。」 「怖かったんだよ…。」 頭まで全てすっぽりと毛布の中に入れ、紗弥加は身体の震えを止めようと必死になっていた。 それでも溢れ出る言葉と、そこに絡みつく感情に、打ち勝つ事は出来なかった。 「英二と過ごす幸せ。それを失う事が怖かった。それはあたしの中で不安に変わって…。おかしいよね、おかしいよ。好きだったのに、ちゃんと英二が好きだったのに。矛盾してた。何もかも。大切なはずなのに。大切なものを自分で壊して裏切って。それでユウジ君まで巻き込んで。あたしは最低だ。最低。さびしかった。さびしくて。さびしくて。でも。それを英二に伝えるのも怖くて。逃げ出したかったんだ。逃げたくて。それで。あたし…。あたし…いったい何考えてたんだろ。」 毛布の中で紗弥加はぐしゃぐしゃに泣いていた。
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