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「英二が死んでからは、死んだことすら受け入れたくなくて。…違う。本当はきっとあたしのせいで英二が死んだって認めたくなかっただけ。きっとあたしが英二を殺しちゃったんだ。失いたくなかったはずなのに。守りたかったはずなのに。あのままずっと、一緒にいるはずだったのに。」
毛布にひどく閉鎖された世界の中で、紗弥加は自分の手のひらをハッと見つめた。
英二とつないだ手、英二を抱きしめたこの手。
そしてこの手でユウジを抱きしめ、恐らくはこの手で、英二を殺した。
その遺体と対面したとき、紗弥加の胸の中ではそんな気持ちが小さく芽生え始めていた。
―暗転―
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