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「意見のある人は、手を上げて発言して下さい」
学級委員長の幸太郎が、みんなを鎮めようと声を張り上げても、騒ぎは全く治まらない。
「そんな当番なんて、聞いた事ないぞ」
「隆人なんて毎日がいじめ当番みたいなもんだよな」
「うるせえな。俺はいじめたりしてねえぞ。寂しそうにしている奴の相手をしてやってるだけだ。有り難く思えって」
一番後ろの席で隆人が声を荒げて、踏ん反り返っている。隆人は学年で一番背が高い。体重も90kgを超える。五年生の教室に、中学生が一人混ざっているようだ。だから席替えがあっても、いつも一番後ろの席だ。でないと、隆人の後ろの席の子は、黒板が何も見えない。
「あたし、そんなの嫌よ」
「良いじゃない。隆人に仕返ししてやりましょ」
「そんな事したら、後が怖いわよ」
女の子達も騒ぎ始めている。
「はい」順子が手を上げて立ち上がった。この案を提案したのは順子だ。
「いじめを無くす為には、いじめられている人の気持ちが解らなくてはいけないと思います。だから、いじめ当番といじめられ当番を順番にやったら良いと思うんです。そうすれば、いじめてる人の気持ちも、いじめられてる人の気持ちも解る筈です。反対するのなら他の方法を提案して下さい」
席に着いた順子の顔は、少し興奮して赤くなっている。順子はこの新学期に転校して来たばかりだが、その活発な性格でもうすっかりクラスに溶け込んでいる
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