あの日

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しかし、一番最近とったノートの内容を読み返すと 「......なんだこれ」 理解出来ないにも程があった。 ちょっとは分かる場所があるかもと、淡い期待を抱いてパラパラとページをさかのぼってみるが、読解出来る場所などほぼ皆無に等しい。至るところに散りばめられた下らない落書きを見ると、余程授業をもて余していたんだろうということが伺えた。やる気のない字は筆圧も薄く、まず読むことすら出来ないというのはかなりの重症だろう。 「......オヤスミナサイ」 「ちょい待てやお前」 寝ようとして下げた頭は案の定、隣に座っている秋汰によって引き上げられた。 「......襟首、放さんかい!」 そう言った瞬間秋汰が手を放す。ちょうど真下にあった筆箱に、ボスンと顔が埋まった。 俺は顔を持ち上げてすぐに秋汰の方を向いて言った。 「さっぱり分かんねぇな!」 「頑張るんじゃねぇのかよ..........」 が、頑張ろうとは思ったさ。確かにな。でも分からなさすぎて自分でもちょっと引いた。俺の頭はどうやらかなり残念らしい。 「このノートとったの本当に俺かな」 「お前の字だろーが」 「......やっぱ?」 となると。これを書いた当時の俺は、はたして内容を理解して書いていたのだろうか?せめてそうであれば、少し位はその内容を覚えていても良いだろう。だが、こんなことを理解出来た自分がいたとはとても思えない。なんだこの意味の分からない記号は。この中の記号、単語のひとつですら俺の記憶には存在しない。 理解して書いたという可能性は限りなく薄いかもしれない。 「............」 人間のやる気とは実に儚いものである。 率直に言おう。 頑張る気が、失せた! まずそんな気をおこした時点で間違っていたんだと思う。しかしたまにあるのだ。なんの予兆もなくふと頑張ろうと思う瞬間が。 こんなクソ暑いところで頑張るのも無理な話だよな....。 自分の馬鹿さといい加減さを棚にあげて、ついには気温に責任転嫁をする。 俺は急にかったるくなってノートを閉じた。 気分は朝とおんなじだ。 暑い。何もしたくない。 科学室に移動したせいで、温度は更に上昇している。科学室は風通しがすこぶる悪いのだ。窓を開けて解消出来るレベルではない。この教室だと、窓が開いていても閉まっていても気温に大差は無いかもしれない。 暑い上に全くの無風状態。そして読解出来ないノート。 やる気を削ぎ落とすには充分過ぎる。
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