あの日

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「......なんだかんだで勉強はしてたからな」 「俺もしてたよ!」 なんだか空しくなってきた。 俺は、はぁぁぁとあからさまに溜め息をつくと再び机につっぷした。 なんかもう嫌だ。 頭がいいヤツというのはそれだけで一目置かれる存在だ。俺も中学の頃はそこそこだったから分かるが、まず先生からの信頼度が違う。何をしても流石だとかそんな言葉で誉められて、なんでもかんでも任される。秋汰くらいになるともうそれが日常茶飯事だ。休み時間などはよく先生の手伝いにつきあってやったもんだ。 ......よく考えてみると秀才ってのも面倒だな。 しかし秀才だって勉強をしていない訳ではないだろう。秋汰も言っていたが、なんだかんだで勉強はしているのだ。俺も勉強はした。ノー勉でテストを受けるようになったのは高校に入ってからだ。 「なんだかなあ......」 そう考えると非常にやるせない。 頭が良くなりたいとは言ったが、そんなことは勉強なくして不可能だ。秀才を羨ましく思うのは本当だが、その人達がどれ程の勉強時間を確保しているかを考えると、そこまでして頭を良くしたいとも思えない。 秀才とはつまり、単純に努力の結果なのだ。 「......お前も努力してんだよな」 「は?」 その努力を努力と思わないタイプの人間も、秀才の中にはいる。俺なんかはむしろ頑張っただけ人に言いふらすけど。...............。 「それが俺とお前の違いか!」 「なんの話だよ」 「学力ぅ......」 「....何唸ってんだよ」 切実に学力が欲しいが切実に勉強したくない。なんだかもう本当にやるせない。 すると、それが俺の表情に分かりやすく出ていたのだろう。秋汰が渋々といった様子で 「勉強......教えるか?」 と、言う訳で。 「お前がやるっつたんだろ」 「ここまで難しいとは聞いてない」 秋汰と二人、放課後残って勉強しているのである。秋汰は呆れ顔でシャーペンを持つと俺が解けなかった問題をスラスラと解いてみせた。 一体なんなんだろう、この不可解極まり無い記号たちは。ちなみに今は数学を勉強中だ。 「だから、さっき覚えろっつった公式。当てはめんのここな」 そう言えばそんなものを覚えろと言われた。 しかしこんな短時間で覚えろというのも無茶な話だ。俺には出来ない。 「覚えてねぇなら教科書見ながらでも良いから......」 「それ早く言え!」 「あぁぁぁあもう本当にお前は......!」
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