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「問題は他にもある。キミの魔法は無差別に発動され、その際近くにいた人間に意図せず魔法がかかってしまう…ということにあるがいいのだ」
また変な語尾。でも言いたい事は理解した。
「つまり、魔法の存在が公になってしまうかもしれない事を恐れてるわけですね?」
「そういうことになるがいいのだ」
「お前はさ、二重の意味で魔法教会に目をつけられてるわけ。“魔法界守秘義務の準違反”“魔法使いの鍛練義務無視”ってな…」
「僕は争うのとか駄目なんだよ…姉さんもわかってるでしょ?」
「それとこれとは違うんだよボケ」
「…っ」
珍しく姉さんが真剣にキレている。思わずたじろいでしまった。魔法関係になると人が変わる性格も相変わらずだ。
「お前このままだと、取り返しのつかない事態を招いて、魔法教会の実行者どもから粛清受けるって言ってんだよ。いい加減ガタガタ抜かさず覚悟決めて制御くらい出来るようになれや!」
「痛っ」
ビールのまだ半分以上残った重たい缶を顔面に直撃させられた。痛い。
「いいか?夢を奪うって事は“可能性”を奪うって事だ。お前は簡単に考えてるかもしれねぇが、知らず知らずに他人の運を搾り取ってんだよ…」
「…」
たとえばだ。母親が危篤という連絡を受けた娘がいるとする。僕とすれ違わなければ間に合う可能性もあったが、そうなってしまったばかりに運を奪われ、死に目に会えなかった。という目に他人をあわせてしまうという事である。
「わかるだろ?それがどんだけ罪深く危険な事かくらい。もうガキじゃねーんだ」
「…それは」
「はっきりさせよう。キミは今、すぐにでも師を持ち制御のすべを身につけねば、いつ粛清されてもおかしくない状態にいる。決断するがいいのだ」
わかってはいた。いつまでも知らんぷりは出来ない事くらい。魔法教会の粛清は悲惨なものだと聞く。僕はまだ、死にたくない。
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