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姉さんの死から早くも半年ーーー。
僕は魁座全空さんの弟子として、修行の毎日を送っていた。
「よ、時雨。頑張ってんな」
「晋太」
「聖さんも、草場の陰から応援してくれてるぜ。ほい、スポドリ差し入れな」
「ありがとう」
晋太の本当の目的はセレナさんだけど、ついででも良かった。僕はスポーツドリンクを受け取り、飲んだ。
「セレナは?」
「彼女はまだ二階じゃないかな…」
「彼氏より先に同棲しやがって、羨ましいなこの野郎」
「そういうんじゃないよ。セレナさんとは」
あの後、家を引き払い、師匠の家にお世話になっている。結果として、セレナさんとも一緒に住むわけで。
「セレナに手出したらただじゃすまねーぞ」
「知ってるよ。わかってるから」
「んな怯えんなよ。軽いジョークじゃねーか。お前がそんなことできねーのは、俺が一番知ってるってば」
「…もう。晋太ってば」
「わりぃわりぃ」
2人して縁側に座る。
「早いな…半年。そういえば、制御出来るようになったって?」
「ああ。うん…まあ、ね」
師匠の指導が凄いのか、僕はこの半年で、魔法の無差別発動をおさえつける事が出来るようになった。
「…頑張れよ。聖さんの仇をとれんのは、お前だけだ」
「よくドラマやアニメでそういう台詞…きくよね」
僕がそういうと晋太は真面目な顔をむけてこう行った。
「警察がつかまえようが他の奴が野郎を倒そうが…それは、そいつの悪事を終わらせただけだ…お前の気持ちは晴れねぇし、何より…」
ぽすんと拳を僕の胸にあててきた。
「聖さんのことなんか他の奴らは知らない。お前を庇って死んだ優しい姉のことを知っているのは、お前だけなんだ…だから、絶対に…お前が倒せ。他の奴にはやらせんな」
「晋太…わかったよ。ありがとう」
「おう!それでこそ俺の認めた親友だ」
晋太の言葉はある種の魔法だ。いつも勇気を貰える。
「きていたんだね。声をかけてくれたら良かったのに」
ふいにすんだ声が背後からした。
「おー。わりぃわりぃちっと男同士の込み入った話をしてたんだ。なあ?」
「そうなんだ」
「ふぅん…ま、いいんだけれどね。さ、行こうか?」
そう晋太に微笑みかけるのは生徒会長の魁座セレナさん。僕らの同級生であり師匠の孫娘にあたる。
「つーわけだ。俺らこれからデートだから。またな」
「じゃ、行ってくるよ」
楽しそうな2人を羨ましくおもう。
「行ってらっしゃい」
僕はそう言って2人を送り出した後、師匠の待つ道場へと向かった。
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