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「師匠。お待たせいたしました」
「うむ。いつにも増して礼儀正しいのぉ」
人を値踏みするようにみるのは、僕の魔法使いの師匠・魁座全空さん。日暮さん曰く世界最強の魔法使いらしい。
「僕の…戦いがみえました」
「ほう」
師匠の表情が変わる。
「何がみえた?」
「はじめ入門させていただいた時…僕は、何となく強くなりたいだけでした。でも、それじゃ、駄目なんです」
「…」
師匠は黙って話を聴いている。
「僕は、勝ちたい…勝つ…勝つんだ!僕のみた僕の戦い…それは、姉さんが死して尚、安心出来るよう“成長”し続ける事です!」
「成る程…あいわかった。ならば教えよう」
「…」
話を聴き終えた師匠の雰囲気が変わった。
「“正規”魔法使いの戦いのさらなる高みへの入り口…“最大魔法”をな」
「最大…魔法…」
頷く師匠。
「そうじゃ。お前の今回の相手…“もどき”だろうが“正規”だろうが倒せば間違いなく、この世界において注目される。それは佐藤聖という“正規”に限りなく近い“もどき”ブランドを不意討ちとはいえ手にかけた者を《倒す》程の実力を持ち合わせていると判断されるからじゃ…すると、自ずと襲撃者がわんさとやってくる。無論“正規”の奴らもくるじゃろう。そうなった時、流石に今のままでは心許ない」
「今の僕の実力は、“正規”の中ではどの位置でしょうか」
その問いかけに床にトンと人差し指をつけ、はっきりと言い放った。
「わしの知りうる限りで、最下位じゃ」
「最下位…」
ぽつりと呟く。しかし師匠はニヤニヤ笑う。
「しかしわしはこうも思う…これは天恵に他ならぬとな」
「?」
最下位がいいことなのか?僕は疑問を持った眼差しを師匠にむける。
「お前の魔法の最大の特徴は“吸収”。それもじゃ、なんと使用者は未成熟で成長途中ときている!びっくりするほど最速でぶっ千切りで強くなれる状態がお膳立てされとるじゃあないか…」
「えと…つまり?」
「お前は戦えば戦うだけ無限に成長出来るということじゃ!」
これはまさに主人公補正というものではないか。僕は強くなるのに必要な材料を知らないうちに全て与えられていたのだ。そしてこれからさきもそれらは戦うだけ落ちているという。
「姉に感謝するのじゃな。お前を成長させ覚醒へと導くは佐藤聖。お前の姉じゃ」
姉さんの言葉、姉さんの全てが脳内でリフレインする。
「姉さん…ずっと、導いてくれてたんだね」
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