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「また、夢を食ったか?」
幼なじみの晋太が、僕、佐藤時雨の横を歩きながら問いかけてきた。
「うん…やっぱりわかっちゃうんだね」
「そりゃお前…10年も親友やってりゃ表情でわかるさ」
僕は魔法使いだ。《獏の魔法》と言って、他人の夢を食べる魔法。僕は生まれてこのかた、魔法使いで良かったと感じた事は一度もない。それを知っている晋太は、凄く気に掛けてくれる。
「無差別に夢を食っちまう魔法。多少でも制御出来りゃ、負担はへるんだろうけど…後1年で俺らも卒業だ。社会に出たら滅茶苦茶困るだろ」
「うん…」
気弱な僕は、いつも兄貴肌の晋太に助けられている。今はまだいいが、いつまでも一緒にいられるわけじゃない。
「時雨お前さ、聖さんに色々教えて貰えよ。やっぱりもどきっても専門家にアドバイス貰った方がいいって」
晋太のいう聖っていうのは、僕の姉さんで、“正規”魔法使いの僕と違って、魔法使いになりきれない“もどき”の人だ。
「でもさ、晋太…知ってるだろ?僕は姉さんが苦手なんだよ…」
「スパルタだってか?はっきり言えば、んなこと言ってる場合じゃねーだろうよ…じゃあどうすんだ…」
姉さんは怖い。だから苦手だ。だけど、他に頼れる人がいないのも事実で…。
「…ごめん。もう少しだけ、考えてみるよ」
「…おう。前向きに検討してくれよ」
そうして僕らは、いつものようにいつもの道を、学校にむけて歩いて行った。
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