魔法使い

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 「それは、告白かしら?」 黒髪ロングヘアー。まるで日本人形を彷彿とさせる容姿の女の子。名を上井草静。上井草は武家の家柄で、彼女は次期当主だ。  「…違うって。上井草さん」 僕は、酔狂な人じゃない。だから、上井草静という人は、正直に申し上げて、タイプじゃない。寧ろ、姉さんに似てる雰囲気が凄まじく駄目なんだ。だけど、仕方ない…。  「告白じゃなくて、次の授業…美術、友達の顔…」 「あなたは、私と友達だったかしら?ごめんなさい。意味がわからない…」 「…だからさ、後…僕らだけなんだ。組んでないの」 もう他の人達は、パートナーと組んでいた。残っているのは準備が遅れた鈍臭い僕と…上井草さんだけだった。 「鏡をみて友達だと言い張ればいいわ…わざわざ即席で組んだ程度の浅い関係が友達だと言うの?それなら私は友達なんかいらないわ」 「そう言わずにさ…僕を助けると思って…」 「何故あなたを助けなければならないの?恩着せがましい真似はやめてちょうだい」 相変わらず苦手だ。なにかにつけて反論ばかりしてくる。他の奴が組みたがらない理由がわかる。  「おい、上井草…佐藤…早く始めろ。他の皆はもう描きはじめてるぞ」 教科担任の柴崎先生がなかば呆れながらそう言ってきた。  「先生。私には友達がいないので描けません」 「佐藤がいるだろ」 「彼は友達ではありません。1つの目的のためだけに協力しあうのは同盟です。故に課題である“友人の顔”には当てはまらない為、彼を描くことは出来ません。以上」 そう言えば窓際の彼女は頬杖をつきながら外をみて黙り込んだ。しかし、地味に傷つく。人の心のうちを考えない子である。そう友達じゃないと連呼しないで欲しい。 「佐藤…先生の顔でも描くか?」 柴崎先生も説得を諦めたようだ。  「…すいません。宜しくお願いします」 そして僕は、友人でない人の顔を、その日一時間で描くことになってしまったのであった。
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