魔法使い

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 「じゃあ、また放課後にな」 「うん」 僕らは昼休みを終えて、それぞれの教室に戻る。  「…」 「…」 教室に入ってすぐに上井草さんを視界にとらえる。相変わらず1人だ。  「佐藤くん…何をみているの?」 「へ?」 こちらを視ずに本に目をとおしたまま視線で判断された。恐るべし、上井草静。つい情けない声が出てしまう。  「あまりじろじろ見られるのは良い気はしないわね。気が散るから、ようがないならそこから真っ直ぐ自分の席に戻ってくれる?」 「え?あ…うん」 上井草さんのなんとも言えぬ気迫に気圧されながら僕は、自分の席についた。   「そういうタイプか。イメージ通りなんだな。上井草静」 「イメージ通り?」 「そ、イメージ通り」 学校からの帰り道、いつものように僕は晋太と共に今日の上井草さんについて会話にはなを咲かせていた。  「晋太のイメージする上井草さんって、どんなの?」 僕の問いかけに晋太は少し考えた後、  「高飛車。毒舌家。ツンデレ。孤独な奴」 「晋太…上井草さんがいたら間違いなく葬られてたよ?」 晋太は鋭い。でもそんな彼の鋭さは割と不幸しかうみだしていない。  「あ、そうだ。忘れてたわ」 ふと思い出したようにそう口にした晋太。  「なに?」 「木下晋太、なんと!彼女が出来ました!」 衝撃発言だった。ちなみにここにきて初めて晋太のフルネーム公開。  「嘘っ!?」 「嘘じゃねーよ」 「相手誰っ!?」 「魁座セレナ」 「難攻不落と言われる生徒会会長じゃないか…」 魁座セレナさんは、日米のクオーター。なかなか美人で、聖女と謳われ、しかし告白した男をことごとく泣き寝入りさせた強者である。ちなみに全国模試トップだ。 「晋太…キミ、凄かったんだ…」  「んだよ。今頃気付いたのか?俺はお前の親友だってのに、過小評価されるとは、お兄ちゃん悲しいよ」 「歳同じだろ」
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