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やんややんやとふざけながら帰る。僕にとっては、唯一と言っていい楽しい時間だった。でも、
「ねぇ、晋太」
「あん?」
「魁座さんと付き合うってことは、こうやって帰る頻度も」
「まあ…自然と減るだろうな」
「…」
「なんだよ。寂しがってくれてんのか?」
「そんなこと…」
寂しがっていた。僕の世界が、1つ失われたような気さえしていた。
「…時雨。お前、寂しがってくれんのは嬉しいけどよ…その、なんだ。家も近所だし、互いの連絡先も知ってる。つまりだな、あまり深刻に考えんなって話だ」
「うん…」
「お前にも必ず春は来る。心配すんな」
「うん…」
そして、晋太の言葉が現実になる日が、ゆっくりと、確実に、近づいていたのだった。この時の僕は、まだ、知らなかっただけで…。
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