1章 ~平凡×非凡~

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
別に、平坦な人生に不満を持っているワケではない。 何もない毎日を不服に感じているワケでもない。 寧ろこのような人生にこそ、幸せというものがたくさん転がっているのだと思う。 毎日学校へ行って、友人と馬鹿騒ぎをして、勉学に勤しみ、部活動にも没頭して、帰宅して、暖かい夕食を食べて、柔らかな布団で寝る。 単調だが満たされた日常を過ごせる人間が、この世にどれほど存在するのだろう? 何もせずとも楽に生きていける人生に、感謝をしなくてはいけない。 これを幸福と言わない人間もいるとは思うが、そいつらの意見なんて俺には全く関係ない。 些細な幸せを1つずつ集めながら、俺はこれからも平々凡々に生きていくのだろう。 でも、時折、感じることがある。 『もっと、刺激が欲しい』、と。 これは、人間に欲望という概念が存在する時点で仕方のない感情で、言うならば自然の摂理なのである。 満足していても、更により良い生活を送りたい。 この向上心こそが文明を発達・進歩させてきたのだから、俺が同じ感情を抱いたところでばちは当たらないだろう。 ……そこまで大きな規模の話ではないかもしれないが。 とにかく、俺はあと少しの刺激が欲しいのだ。 高望みなんてしない、ほんの僅かな非凡でいい。 皆とは違う体験を、一度はしてみたいのだ。 「なんて、ね」 所詮は絵空事。 このご時世、そんな奇跡が起こり得るワケがない。 こんなくだらないことを考えるなんて、高校2年にして厨二病でも患ってしまったのだろうか。 小さくため息を吐いた俺は、今日も黒板の板書を眺めながら、1人嘲笑するのであった。 だから、この時、今後俺の人生が全くの非凡の道を進むことになるとは到底思わなかったし、ましてや更なる幸せを噛み締めることになろうとは露にも考えなかったのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!