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目の前は血の海だった。
ぐったりと横たわっている両親はきっともう死んでいる。
両手を見た。
赤く染まった右手には鋭利な刃物が握られている。
左手には細長い臓物。
腸、かな。
そんな考えを中断させたのはガタンという物音。
音が聞こえた方向を見れば、兄が驚愕の表情で私を見ていた。
違う、私じゃなくて両親を、だ。
「くれ、あ……これ、お前が……?」
純粋な疑問をぶつけられ、対応に困った。
兄が居たなんて思ってなかったから。
どこか、少なくとも外に出かけていると思っていたのに。
「……っ、呉亜」
「うん。やった」
もう一度名前を呼ばれた私は素直に白状した。
兄に嘘は吐きたくない。
兄の目を真っ直ぐと見て、
「私が殺したよ」
そう伝えた。
兄は目を見開き私の元へ駆けて来る。
殴られるのかと思ったのに。
私は兄の胸の中におさまっていた。
いきなり抱き締められ、私は固まる。
「今すぐ逃げろ」
「え?」
それから言われた言葉を私は理解できなかった。
兄の顔を見ると苦痛に歪んだ笑顔を浮かべている。
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