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ガラスも割れてしまい、もう窓組しか残っていない窓から陽の光が入る。
そんな中汚らしいソファーに寝転がっていた人間がゆっくりと起き上がり首をもたげる。髪質のせいなのかボサボサになった髪の毛をガシガシと治す
まだ眠気が強いせいであくびを一つすると何かが足りないと思い、机に置いておいたメガネを取りかける
彼はため息をつきながら学ランの胸ポケットを探りケータイを取り出す。
今となっては絶滅危惧種の二つ折りのガラパゴスケータイというやつだ。
だがケータイを開いても液晶には光が映ることはなく、ただ薄暗く彼の顔を映していただけだった。
ケータイを閉じソファーに投げると立ち入り禁止と書かれたドアを開きながら靴を履いた。
踵は踏みつぶして履いているので履き心地などはとてもいいとは言えないだろう。
ドアを半開きにしたまま歩くだけでカンカンと音の鳴るやかましい階段を降りると近くにある水道まで行き、蛇口をひねった。
蛇口から透明な水が流れる。季節的な事を考えれば触るだけで針が刺す様な冷たさを感じることができるだろう
彼はため息をつき、手のひらを器にして水をためる
覚悟を決めたのか思い切り水を顔に叩き付ける。予想通り冷たい水が彼を襲う
その冷たさに耐えながら顔をぬぐい目を開ける
もう一度水をすくうと、口に入れ数回濯ぎ、吐き出した。
蛇口を止めるとシャツで顔を拭きながらもう一度さっきの階段を上った。
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