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愛花はふうん、と頷き、たった一輪の薔薇の蕾の花の香りをすうっと吸い込んだ。
「なんでそんなの突然買ってきたんだよ?」
「あなたは、花言葉なんて知らないもんね」
「は……?」
「私の好きな事になんて興味をしめさなかった」
「………。」
「本当のプロホーズされたら、送ろうって、密かに夢見てたの」
愛花は、自嘲的に笑い、薔薇の蕾をそっと撫でるとグッと力を入れて茎から蕾をちぎる様に手折った。
そして、涙目で、セロファンにくるまれてリボンだけを主張する茎だけになったそれを彼に押し付けた。
「なんだよ、これ……」
「私の気持ちの残骸。
サヨナラ 」
愛花はそのまま、その場を去った。
彼が、茎だけになったその私の心をどうしたかなんて知らない。
きっと、何も考えずに、ゴミ箱に捨てただろう。
花言葉は
「あなたに尽くします」
愛してたのに。
浮気あいてに子どもができたなんてベタすぎる。
だけど……
簡単におろせ、なんて言わない
そんな人だったから愛してた。
もう二度と会う事もないだろうけれど。
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