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寒さも厳しくなってきた。
こんな日は、できるならば家からでたくないものだ。
三人からの代返を頼まれている愛花だって、できるなら布団に潜り込んでいたかった。
けれど、朝一の電話は、急な代返。
憧れの彼からのお誘いだと聞けば来る予定のなかった授業にでるしかなかった。
「愛花~ 千円かして!」
「またあ? この前の五千円、返してもらってない!」
プイッと横を向いた愛花の後ろで手を合わせているのが、圭司。
大学に入ってからの友達で、何かと愛花に頼み事をしてくる。
どこか愛花を便利屋と間違えてるところがあるのだが、何故か放っておけないのは実家で飼っている犬のタロウに似てるからかもしれない。
「頼むよー 利子にパフェつけるから。。 サイフ忘れて飯食えないんだ」
「もう……しょうがないなあ」
愛花は財布から二千円を抜き取ると圭司の手のひらに乗せる。
「バイト代入ったら、ちゃんと返してね!?」
「わかってる! サンキュ、愛花」
目立たないけど、付き合ってみれば、姉御肌の優しい愛花。
友達は多かったが、どこかダメダメな人が多い気がして愛花は圭司の去っていく後ろ姿に眉をよせた。
「おはよ、また人の世話やいてんの?」
のんびり近寄ってきたのは親友の芹香。愛花の親友で、同じ大学で、更にはご近所さんでもある。
「やだな、そんなんじゃないよ」
苦笑いする愛花にため息をついてから頭をぐしゃっとなでる。
「ダメダメな人ばっか呼び込むのはどういうわけだか…… ほら、いくよ」
「う、うん」
一緒に歩きながら、芹香もそう思っていたのかと思わず苦笑する。
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