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二次会のカラオケで、ご機嫌に大声で歌う男、田辺。
さっきから怒られてばかりいる男の名前はすっかり頭にインプットされてしまった。
隅のほうで、言われたとうりに薄いカクテルを舐めながら、飲みすぎて周りが見えないまま暴走する男をハラハラしながら見ている。
女の子は皆、ほとんど無視の状態だがそれすらも気づく様子はなく、とうとう幹事の男の子に隅に連れてこられた。
隣で怒られてシュンとしているところをみると、悪い人ではなさそうだ。
「とにかく、今日はもう飲むな、そこで好きな物食べてろ!」
そう言い残して、グループに幹事が戻っていくと、隣にいる私としては……
「あ、これ美味しいですよ?」
まあ、放っておくのも可哀想でついはなしかけてみたりする。
ガバッと頭をあげて、うれしそうにフニャッと笑う姿は、確かに酔っ払いなんだけど……
なんかかわいいぞ?
ちいさな母性をくすぐってくる彼は、私が勧めたたこ焼きをむぐむぐと食べ始める。
思わず、一生懸命食べる姿に笑ってしまう。
「そういうのがタイプだったんだ?」
「え?」
さっきの、目の綺麗な人だ……
そう思いながら、頭をまわす。あれ?私、今、何言われた?
笑顔に思わず笑顔を返しながら、ハッとして頭を大袈裟なくらいにふる。
「や、違うよ。そんなんじゃないし」
「でも、さっきから話しかけられてもニコニコしてるだけだったのに、自分から声かけたよね?」
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