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ガチャリと扉が開いて、長身の男が部屋に入ってきた。
「気分はどうだ、ルシェス」
浮き立った足取りでつかつかとベッドに近づいてきたのは、この国の王ベルナールだ。
王と言っても、まだ若い。
22、3といったところだ。
金ぴかの王冠も豹柄のファーがついた真紅のローブもどこか成金趣味に見えるのは、ルシェスが色眼鏡で見ているせいだろうか。
「いいわけないだろ。こんな悪趣味な部屋に閉じ込められてさ」
ふてくされた表情で、ルシェスは上目遣いにベルナールを睨んだ。
「そんな反抗的な態度もそそられるな」
一向に気にした風もなく、ベルナールはにやりと笑って、熱く光る瞳でルシェスをみつめた。
この男には品性がない、と見るたびにルシェスは思う。
顔立ちそのものは、悪くない。
美男の部類に入る方だろう。
だが、頭の中で考えていることがそのまま顔に出るらしく、目つきがいやらしいし、舐めまわすようにルシェスを見る。
小麦色の肌に赤い髪と瞳、鍛え抜かれた逞しい体躯の男だった。
「これ、はずせよ」
ジャラッと鎖を鳴らして、ルシェスは手首に嵌まる枷をこれみよがしにかざしてみせた。
鎖はかなり長く、体を動かすのに不自由はない。
だが、ベッドの脚にしっかり繋がれていて、逃げられなかった。
一国の王子がこんなものを嵌められているなんて、屈辱だ。
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