chapter Ⅰ

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壮麗な扉の前に佇み、シャルロットは小さく深呼吸した。 「ああ……緊張するわ」 そわそわとティアラの位置を直して、シャルロットは高鳴る胸をそっと押さえた。 「大丈夫ですよ、姫さま」 姫付きの執事、アスレイが端麗な顔に優しい微笑を浮かべて、シャルロットを見た。 「今宵の姫さまは殊のほかお美しい。貴公子たちが競ってダンスを申し込むでしょう」 「いやだわ、アスレイったら。お世辞を言っても何も出なくてよ」 白い頬を薔薇色に染めて、シャルロットはどぎまぎと視線をそらした。 姫付きの執事は、姫に甘言を言うのも仕事のひとつ……わかってはいるけれど、こんな風にさらりと言われると照れてしまう。 ましてやこんなに綺麗な顔の執事なら、なおさらだ。 ほてる頬を押さえて、シャルロットはそっとアスレイを盗み見た。 乙女のようにキメ細やかな白い肌。 涼し気な切れ長の瞳。 エメラルドグリーンの瞳は、時に真剣なきらめきを帯びて、時に包みこむように優しく、常にシャルロットを見守っている。 長く揃った睫が、たおやかな美貌をいっそう上品そうに見せていた。 スッと細い鼻梁もやや薄めの唇も、完璧すぎてため息が出る。 シャープな線を描く顔立ちは中性的な雰囲気を漂わせていたが、ひとたび剣を握ればベリーズ王国切っての遣い手だった。 スラリとした長身の肢体は、何を着ても似合ってしまう。 亜麻色の髪が柔らかく目もとにかかり、ドキリとするほどかっこいい。 執事と言ってもまだ19になったばかり、名門貴族の出自とあって、貴族の娘たちの熱い視線を一身に集めてた。
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