404人が本棚に入れています
本棚に追加
壮麗な扉の前に佇み、シャルロットは小さく深呼吸した。
「ああ……緊張するわ」
そわそわとティアラの位置を直して、シャルロットは高鳴る胸をそっと押さえた。
「大丈夫ですよ、姫さま」
姫付きの執事、アスレイが端麗な顔に優しい微笑を浮かべて、シャルロットを見た。
「今宵の姫さまは殊のほかお美しい。貴公子たちが競ってダンスを申し込むでしょう」
「いやだわ、アスレイったら。お世辞を言っても何も出なくてよ」
白い頬を薔薇色に染めて、シャルロットはどぎまぎと視線をそらした。
姫付きの執事は、姫に甘言を言うのも仕事のひとつ……わかってはいるけれど、こんな風にさらりと言われると照れてしまう。
ましてやこんなに綺麗な顔の執事なら、なおさらだ。
ほてる頬を押さえて、シャルロットはそっとアスレイを盗み見た。
乙女のようにキメ細やかな白い肌。
涼し気な切れ長の瞳。
エメラルドグリーンの瞳は、時に真剣なきらめきを帯びて、時に包みこむように優しく、常にシャルロットを見守っている。
長く揃った睫が、たおやかな美貌をいっそう上品そうに見せていた。
スッと細い鼻梁もやや薄めの唇も、完璧すぎてため息が出る。
シャープな線を描く顔立ちは中性的な雰囲気を漂わせていたが、ひとたび剣を握ればベリーズ王国切っての遣い手だった。
スラリとした長身の肢体は、何を着ても似合ってしまう。
亜麻色の髪が柔らかく目もとにかかり、ドキリとするほどかっこいい。
執事と言ってもまだ19になったばかり、名門貴族の出自とあって、貴族の娘たちの熱い視線を一身に集めてた。
最初のコメントを投稿しよう!