大学生活

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「加西くん……」 困りながら加西くんの名前を呼ぶと加西くんはチラッとあたしを見て広末くんを見た。 「また始まったのか、お前の一目惚れ癖」 一目惚れ癖? 首を傾げると広末くんは可愛い笑顔で笑った。 「今度は本気ですよー。山崎さん見た瞬間ビビッときたもん。運命ってやつですよー」 ダメだよ広末くんー!! 舜くんの前でそんな事言わないでー!! 何故か泣きそうになると加西くんはフッと笑って広末くんを見下すように見た。 「餓鬼だな」 「加西くん!?」 「運命?んなもん信じてんのか。お前も知ってるだろ。運命なんてもん、信じるだけ無駄なんだよ」 そう言い切った加西くんの目はとても冷たかった。 加西くん、何があったんだろう。 そう言われた広末くんの顔も一瞬だけ沈んだから。 あたしは広末くんの腕を引っ張って加西くんの前に連れてきた。 「吉岡さん!?」 「吉岡?」 「えっと……。とりあえず、帰ろうよ」 そう言うと二人は顔を見合わせた。 加西くんが広末くんの腕を掴む。 それから通り過ぎる時小さな声で「ありがとう」と言った。 去って行く二人の背中を呆然と見送るあたし達。 あたしはハッとして皆を振り返った。 「あたし達も帰ろうよ!」 そう明るく言ったのに、舜くんはとても悲しそうな顔をしていた。 舜くん……。 芽依も気まずそうにしている。 どうしたらいいんだろう。 二人が悪いわけじゃないんだけど……。 誰も何も言えないまま時間だけが過ぎていった。 不穏な空気のまま幕を開けた大学生活。 これからどうなるんだろう……。 .
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