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「唯ちゃんが悪いんだから!!」
「菜奈香ちゃん……」
「唯ちゃんがあたしに嘘つかなければこんな事しなかった!!唯ちゃんは稜を好きって言ってたあたしを嘲笑ってた!!全部唯ちゃんが悪いの!!」
思えばそうかもしれない。
あたしがあの時ちゃんと言っとけばこんな事にはならなかったのかもしれない。
後から走ってくる音。
それは秀くんが皆をここへ連れてきてくれた音だった。
皆が無事で良かった。
ここまでしてくれた皆に、お礼をしないと。
あたしは菜奈香ちゃんに頭を下げた。
「ごめんなさい」
「ちょっ!?唯!!」
芽依があたしの肩を掴む。
それでもあたしは頭を下げ続けた。
「あたしがちゃんと言えば良かったね。そしたら菜奈香ちゃんは稜にこんな事しなかった。でも、言えなかったの。菜奈香ちゃんは友達だから。いきなり傷つけたくなかった」
「偽善者!!そんな事言って、本当は面白がってただけでしょ!?」
「そう思われてもいいよ。どう解釈しようが菜奈香ちゃんの自由だもん。でもね」
顔を上げて真っ直ぐ菜奈香ちゃんを見つめる。
「あたしへの仕返しに、稜を、皆を巻き込まないで」
「そんなの……っ。全部唯ちゃんが……!!」
「あたしが悪いよ。でも、皆は関係ない。それなのに菜奈香ちゃんは皆も巻き込んだ。皆を傷つけた。あたしはそれが許せない。だからあたしに謝らなくていい。でも皆には謝って」
悔しそうにする菜奈香ちゃん。
そんな菜奈香ちゃんにニコルさんが近付いた。
「菜奈香、お前の負けだよ」
「ニコル……!!」
「お前にリョウくんを返す気がなくても、リョウくんは必ずユイちゃんの元に帰る」
目を見開く菜奈香ちゃん。
あたしはそんな菜奈香ちゃんをチラッとだけ見て稜に近付いた。
稜の前に座って手を握る。
すぐ逃げたり、すぐ泣いたり、迷惑ばっかりかけるあたしだけど
それでも……
それでも稜は……
「こんなあたしを、好きでいてくれますか?」
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