消せない思い出

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‐稜side‐ 真っ暗で、寒い空間。 ここはどこ? キョロキョロしていると前を女の子が走って行った。 一瞬だけあったかい風が吹く。 不思議と気になってしまう。 待って……!! 決して速いわけではない。 それなのに追いつけない。 どうして? 俺は知りたいんだ。 君が気になる理由。 手を伸ばしても捕まえられない。 走ってるだけなのに、何故か心の中があったかくなってくる。 時折振り向いて笑ってくれる女の子。 その笑顔に胸が締めつけられる。 ねぇ、君は誰なの? 不意に頬に冷たいものが当たった。 え……? 周りを見れば雪が降っている。 どうして雪なんて……。 立ち止まって前を見れば、そこには女の子と、高校の制服を着ている俺が立っていた。 え……? 俺が何を言ってるのか分からない。 必死に女の子に訴えかけてるのは分かる。 女の子の目から涙が零れた。 その瞬間ドクンと心臓が脈打った。 なんだ、これ……。 『あたし、泣き虫だよ……?』 知ってる……。 『あたし、可愛くないよ……?』 この言葉、知ってる……。 『あたし、一人ぼっちだよ……?』 ドクドクと心臓が激しく鳴る。 『こんなあたしでも、好きでいてくれますか……?』 その言葉を聞いた瞬間、自然と口が開いていた。 .
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