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『「どんなに自分を見下しても、俺は何を言われてもお前が好きだ。それに、もう一人じゃない。俺は、どんな事があっても必ずお前を守るから。だからお願い。俺と付き合って」』
そう言うと女の子は可愛い顔で笑った。
『あたしも、有沢くんが、好きです』
目から涙が零れた。
覚えてる。
ちゃんと、覚えてるよ。
どうして俺は、こんなにも愛しい人の名前を忘れてたの……?
好きなのに、大好きなのに……。
ごめん。
ごめんね。
パッと目の前が明るくなる。
大好きな親友、その彼女、友達、恩師、後輩、同級生……。
どうして俺は皆との思い出を忘れてたの?
一気に甦る皆との思い出。
楽しかった思い出。
辛かった思い出。
胸が苦しい。
すると俺の前に誰かが立った。
「未来……っ」
『やっと思い出したね』
「ずっと、俺に話しかけてくれてたよな……?」
『だって稜、全部忘れそうだったんだもん。あたしは稜の幸せを願ってるのに、こんなの全然幸せじゃない』
「未来……」
『あたし、今の彼女、大好きだよ』
「え?」
『稜を大切にしてくれてる。稜を、舜を変えてくれた。だからあたし、こうして稜の記憶守ってたんだよ?』
未来は昔と変わらない笑顔を向けると真っ直ぐ光の奥を指差した。
『稜の居場所はここじゃない。たくさん彼女悲しませたんだから、早く帰って謝りなさい。それから、もう二度と手放さないで』
未来に頭を下げて走り出す。
会いたい。
抱き締めたい。
離れてた分、たくさん頂戴?
俺にはもう……
「お前しか考えられないんだよ、唯……」
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