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‐唯side‐
「お前しか考えられないんだよ、唯……」
突然稜がそう言った。
あたしは目を見開いて固まる。
その瞬間あたしの手は引っ張られて、気づけば稜の腕の中だった。
「稜……?」
恐る恐る名前を呼ぶ。
腕に力が入った。
「辛い思いさせて、ごめん……」
少しだけ離されて目を見つめる。
稜の目から涙が溢れていた。
「ただいま、唯」
「……っ!!」
稜だ……。
ちゃんと、稜だ……!!
涙が溢れて止まらない。
稜に抱きつくと強く抱き締められた。
「どうして……っ」
菜奈香ちゃんが崩れ落ちる。
そんな菜奈香ちゃんにニコルさんが口を開いた。
「言っただろ?菜奈香の負けだって。最初から菜奈香は負けてたんだよ」
「そんな事……!!」
「菜奈香とユイちゃんではリョウくんと過ごした時間も、リョウくんが夢中になってた時間も何もかも違うんだ」
泣き出す菜奈香ちゃん。
ニコルさんはあたし達に出ていくように指示した。
稜と手を繋いでるのが何だか不思議。
家の外に出ると稜が皆に頭を下げた。
「ごめん、迷惑かけて」
「稜……」
「自分でも感覚はあったんだ。何かを忘れてる感覚。それが皆との記憶だなんて思ってもみなかった」
そんな稜に近づく舜くん。
「稜。俺の事、わかる?」
不安そうな舜くん。
稜は舜くんに笑いかけると口を開いた。
「もちろん。舜だろ?俺の親友」
「稜!!」
稜に抱き着く舜くん。
本当に嬉しそうに舜くんは笑っていた。
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