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「でも、どうして唯は有沢くんの忘れたくない思い出がわかったの?」
芽依にそう言われてあたしは稜を見た。
不思議そうに首を傾げる稜。
あたしは恥ずかしくなって俯いた。
「あたしが、忘れたくないから……」
「え?」
「あんな大切な日を、忘れたくないから。だから稜も同じだったらいいなって」
皆が優しく笑うのが分かる。
その視線が恥ずかしいからやめてほしい。
「でも本当に良かった。稜が元に戻って」
舜くんの言葉に稜があたしの手を更に強く握る。
「俺も良かったって思う。唯の側にいないのはもう嫌だから」
「稜……」
「俺、もう絶対唯から離れない」
そう言って稜はあたしを後ろから抱き締めた。
赤くなる顔。
周りの皆に祝福されて、あたしはもう幸せだった。
稜がここにいる。
大好きな稜が、手を伸ばせばここにいる。
「稜」
「ん?」
「大好きだよ」
「俺も」
二人で微笑み合う。
あたしはなんて幸せなんだろう。
辛かった日々がもう遠い昔に思える。
あたしと稜は手を繋いで家に帰った。
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