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驚いて目を見開く。
秀くんは意地悪く笑いながら婚姻届をヒラヒラさせていた。
「別に今市役所に出しに行かなくていい。でも、この紙切れ一枚書いとくだけでちょっとは安心できるだろ?」
「秀くん……」
「だから、ほら」
ボールペンと婚姻届を目の前に置かれる。
これは未来の約束。
絶対稜から離れない、心配かけないっていう誓い。
あたしは……。
迷わずボールペンを手に取って名前を書く。
そんなあたしに稜が目を見開いた。
「唯?」
「あたし、誓うよ。もう稜に悲しい思いさせない。あたしの事で心配かけない。これであたしは稜だけのものになれる」
稜に笑いかけると稜に抱き締められた。
「ほんとに、いいの……?」
「うん」
「後悔しない?」
「しないよ、絶対」
するわけない。
稜と出会った時から後悔なんてした事ないよ。
稜とだったらずっと一緒にいたい。
「ほら。稜も書いて」
稜にボールペンと婚姻届を渡すと稜はあたしに笑いかけて名前を書いた。
あたしと稜の名前が書かれた婚姻届。
秀くんはそれをクリアファイルに入れるとあたしに渡した。
「これ、出したい時に出せばいい。これで誓ったんだから、もう離れんなよ?」
「ありがとう、秀くん」
ニコルさんと秀くんはそのまま帰って行った。
残されたあたしと稜。
横から抱き締められてそのままソファーに座った。
「緊張した……」
「ニコルさんの診察?」
「そうじゃない。あんな紙一枚に名前書くだけなのに、なんであんなに緊張するんだろう……」
「そうだね。テストも名前書くのに」
笑うと稜があたしの頬を撫でた。
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