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入学式を終えて教室へ向かう。
すると何やら泣きそうな呻き声が聞こえた。
え？
何？
怖くなって周りを見渡す。
すると木の陰で呻き声をあげている人を見つけた。
あれ？
見覚えがある。
そう思って近づくと、その女の子は木に爪を立てていた。
「あの……？」
声をかけるとビクッとしてあたしを振り向く。
その人は葵さんだった。
「うわ！？唯ちゃん！？」
「お久しぶりです、葵さん」
葵さんに笑顔を返す。
三浦 葵（みうら あおい）さん。
フランに誘拐された時に助けてくれた女の子。
芽依に負けず劣らず美人だ。
芽依も葵さんとは仲良くしている。
「葵、何してるの？木が悲鳴をあげてたけど？」
「めーたん！！聞いてよ！！」
芽依とあたしの手を掴む葵さん。
半泣きになりながら木の向こうを見た。
「啓と同じ学部に進学したのはいいよ。でも、同じ学部だからこそ油断してたの！！」
啓、とは葵さんの彼氏で稜の友達。
お金持ちでカッコ良くて優しいアイドルのような男の子だ。
広瀬 啓（ひろせ けい）くん。
不思議な男の子……。
「何が言いたいの？葵の彼氏が何？」
「あたしは啓が死ぬ程好きだよ？貧乏だけど啓は一切罵らないし……。こんなあたしを婚約者にしてくれた。でも！！啓は何も悪くないと分かりながらもアレは悔しいよ！！」
そっと木の向こうを覗いてみる。
そこには啓くんがアイドルスマイルをしていて、周りを女の子が取り囲んでいた。
「アレは流石にあたしも嫌だな」
「でしょ！？めーたん分かってる！！」
「葵さんは、学部どこですか？」
「んっとー、○○学部」
「あ、同じです」
．
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