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「あ……」
「そういえば、アンタも同じ学部だって言ってたっけ」
「うん。えっと……」
「何?」
口ごもっていると加西くんはため息をついた。
「そうやって何も言ってくれないと分からないんだけど」
「ご、ごめんね!!えっと……、いいのかなって……」
「は?なにが?」
「あたし、結構地味だし……、加西くんみたいな人だったらあたしなんかと話したりしないんだろうなって……」
「なんでアンタと話しちゃいけないわけ?」
「話しちゃいけないって事では……」
「アンタが自分に自信ないのは別にいいよ。でもそれを俺に押し付けるようなことしないで」
「ごめんなさい……」
謝ると加西くんはもう一度ため息をついた。
「アンタ、すぐに謝るよね」
「うっ……」
「性格なの?」
「うん……」
「そうなんだ。やっぱりアンタ、今までと違う」
加西くんの言う今までとは何のことだろう。
でもきっと聞かれたくないだろうし……。
あたしは鬱陶しそうな芽依と、目をキラキラさせている葵さんと広末くんを見た。
先生から簡単な説明を受けるとそのまま解散となった。
芽依と葵さんと一緒に教室を出ようとすると啓くんが近寄ってきた。
「吉岡」
「え、何?」
「なんであたしじゃなくて唯ちゃん!?」
「葵黙ってろ。俺、学部移動になったからさ」
「そうなの?」
「そうなの!?」
「葵うるさい。面倒だと思うけど、葵の面倒見てやってくれない?」
「あたしは小さい子供か!!」
「んで、これ」
啓くんがあたしに紙を渡す。
「葵の取扱説明書」
「取扱説明書……」
「よろしくな」
そういって去っていく啓くん。
ぶつぶつ言っている葵さんに芽依が頭を叩いている横でその紙に目を通す。
葵さん、凄く愛されてるんだな。
こんなに葵さんに詳しく書かれてる。
紙の下の方には啓くんが『俺が葵の側にいられれば良かったんだけど、ごめん』と書かれていた。
「葵さん」
「どうしたの?」
「啓くん、本当に葵さんの事好きなんだね」
そう言うと葵さんの顔が赤くなった。
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