9.決断のとき

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ロッカーに脱いだ白衣を仕舞う祐希を、ぼんやりと眺めていたら。 背後から大きな音が響いた。 それはもう、心臓が口から飛び出るってほどびっくりした。 「なんだ!?」 祐希の驚いた声と同時に振り返り、目が点。 バァーンと盛大に開け放たれたドアから入ってきたのは、くそ寒い時期に汗をかいている男。 「笹木っ!ドアは静かに開けろ。それに生徒は入室禁止だっ」 「ちょっと顔貸せ、間宮」 祐希の言葉を遮って、ずかずかと歩み寄ってきて。 胸倉掴まれるんじゃないかって距離でにらまれた。 一応、俺も教師なんだがな。 絶対そうは思ってないだろう? 「間宮先生は俺と今から出るんだよ。何の用だ?」 「どこ行くんだよ」 「藤沼の家だ。無断欠席だしな」 この会話は祐希と笹木の間で交わされているのだが、笹木の視線は俺をにらみつけたままだ。 「家? ……んなとこに居ねぇよ」 は? いない?
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