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「……先生? 間宮先生も」
なんとか祐希をひきずりあげて廊下を進むと、驚いたような顔が近づいてきた。
初めて見る顔だったが、こいつが西園寺なんだろう。
笹木とは対照的に、ずいぶん心配そうな顔で駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか? あ、水持ってきます」
なんか、いいやつだなぁ。
後光が差して見えるよ。
西園寺が持ってきてくれた水を飲み、リビングに座り込む。
ほんと、座り込むって表現がぴったりだ。
なぜってこの部屋、椅子が一つしかない。
だだっ広いリビングに、テーブルが一つと椅子が一つ。
空いたスペースにラグが敷かれていたから、とりあえず皆でそこに座った。
なんなんだ、この部屋。
生活の匂いが全くしない。
「こんなところで一人暮らし……つか、一人暮らしだなんて聞いてないぞ」
呼吸の整った祐希がぶつぶつとつぶやいている。
西園寺がざっと説明してくれたところによると、両親と不仲で一人暮らし。
聞いてねぇ。
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