9.決断のとき

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なんとなく、ぼんやりとだけど思い出してきた。 そうだ、そうだ。 あの時、この集合写真を撮るって言われたあの時。 そっぽ向いてる俺以上に、この輪から外れているやつがいた。 俺たちが居た間中ずっと、壁際に座って窓の外を眺めていたやつ。 たしか中学生って言っていたけど、小学生?ってくらいガキっぽい顔をして、やけに冷めた目をしていた。 まさか…… 振り返ってベッドを見る。 すやすやと眠る藤沼の姿に、あのときのガキの姿を重ねてみた。 あれが、藤沼か? だったらこれに写っていないのもうなずける。 そいつはずっと、根が生えたみたいに椅子に座ったままだった。 一人黙って外を眺めて。 気になったから話かけて見たけれど、ちらりと視線をくれただけで応えてもくれなかった。 それはいい。 いいんだけど。 そうか、あのガキか。 そうか、よかった。 生きてたんだな。
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