9.決断のとき

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家庭環境が複雑でね、と苦笑いで説明された、窓際のガキ。 フリースクールの大人たちも、手を焼いているというか、扱いかねているというか。 とにかく居ても居ないような感じだった。 静かに外を眺めるその後ろ姿が、全てを拒絶しているようで気になって。 俺にしては珍しく、自分から声をかけたんだ。 まぁ、軽く無視されたけどな。 でも一瞬、俺を見たあの顔は忘れられない。 なんの感情もこもっていない、能面みたいな顔。 そして何も映し出さない瞳。 ぞくりとした。 こいつ死ぬんじゃねぇかって。 理由もなくそう思った。 だからと言って俺に何ができるわけじゃないんだけど、とにかく、他のやつらみたいに見ないですませることはしないでおこうと。 素人なりにがんばってみた。 結局は無駄だったんだけど。 でもまぁ、こうやって生きているなら、まるっきり無駄ではなかったのかもしれない。
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