9.決断のとき

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天井を見上げて、大きく息を吐いた。 いいんだろうか? こんな俺で。 白い天井に、あの日の藤沼の姿を映し出す。 抜け殻のような、ただ息をしていただけの子供。 そして今。 藤沼はいつも笑っていた。 なんでここで?って思うようなときでも、何かを押さえ込むように笑顔を浮かべた。 あれは……、俺がさせていたんだな。 何気なく放った場つなぎの一言が、こんなにも大きく影響していたなんて。 すごく怖い。 このままこいつのそばに居たら、もっともっと無理をさせてしまうんじゃないかと。 そう思ったら震えがきた。 なぁ、藤沼。 俺はどうしたらいい? 俺はおまえが思うほど、優しくもなければ、いい人でもない。 利己的で、計算高い嫌な奴なんだ。 歳のせいでもなければ、性別のせいでもない。 俺のせい。 俺がダメなんだよ。
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