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顔を上げた藤沼の、血色の悪い頬が目に入る。
最近は健康そうな肌艶していたのに、昔のあいつと重なった。
それでも違うのは、少し大人になった顔と表情。
俺を見据える瞳は、何か言いたげに揺れていて。
震える唇が笑みを形作る。
「……俺ね、センセ」
胸が締め付けられて、息が苦しい。
俺が笑っていろなんて言ったから。
だから、こいつはこんな風に、こうやって無理やり笑ってきたんだ。
ごめん、藤沼。
「俺、センセーが好き」
…………え?
思考が止まった。
おまえはまだ、俺に言うのか?
「一ヶ月、すごくすごく、楽しかった」
俺はおまえを忘れていたのに。
「ありがと、センセー」
まだ俺が好きなのか?
「大好き。…………バイバイ」
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