9.決断のとき

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頭を何かで殴られたような気がして動けなかった。 潤んだ藤沼の瞳には間違いなく涙がこみ上げてきているのに。 その唇は、震えながら言葉を繋ぐ。 必死に作られた笑顔と、濡れた睫と。 それでも決してあふれ出さない涙を見ていたら、たまらなくなった。 もう、いいから。 無理して笑うな。 「藤沼」 ひきつる頬に手を伸ばす。 そっと触れれば温かくて。 なぜだかわからないが、胸が痛い。 「……おまえ、あん時のガキだったんだな。 西園寺に聞いたよ。あいつが知っていること全部」 藤沼の顔から笑みが消え、唇がぎゅっと噛み締められた。 俯く顔を押し上げて、揺れる視線をしっかり捉える。 おまえの笑顔は好きだけど、辛そうに笑うおまえは嫌いだ。 だから。 「あの時言ったこと、忘れてくれ。何も知らないくせに無責任なこと言った。 悪かった」
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