9.決断のとき

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言い訳なんて何もできない。 その場しのぎで、無責任で。 きれいさっぱり忘れ去った俺が、今さらとやかく言える立場じゃないのはわかっている。 だけど、痛いんだ。 おまえの涙をこらえた笑みを見るのは。 どうしようもなく胸が苦しい。 ごめんな、藤沼。 俺はやっぱり自分勝手な男みたいだ。 「もう無理して笑わなくていい」 ガキなのは俺のほうだった。 親の愛も、温かいご飯も、友人も。 なにもかも当たり前だと思って生きてきた。 えらそうなことを言いながら、今じゃ教師なんてやっているけど。 俺はまだまだ子供なんだよ。 だから、もういいよな? 好き勝手言わせてもらうぞ。 「これからは、悲しいときはちゃんと泣け。 腹が立ったら、きちんと怒れ。 笑って、泣いて、もっと自由に生きていけばいい。 それでも寂しいときは…… 寂しいときは、俺を呼べ。 そばに居てやるから」
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