9.決断のとき

30/33
前へ
/285ページ
次へ
「だったら、バイバイなんて言うな。……寂しいだろ」 頬を伝った涙を指で拭ってやる。 その手の上にまた新しい雫が落ちてきて、それが温かくて、愛おしい。 「おまえがいつもそばに居たから、居ねぇとなんか落ちつかないんだよ。 おまえのせいだからな。責任取れよ」 「……う、ん。取る、よ。……責任、取……っ……」 ぶわっとあふれた涙が一気にこぼれたかと思うと。 うわぁぁっという声に全てがかき消された。 声を上げて泣きじゃくる藤沼を、腕の中に抱え込む。 背を抱き寄せて、頭を撫でて。 いっぱいいっぱい泣けばいい。 「今までよくがんばってきたな。辛いこと全部吐き出しちまえ。 これからは俺が愛してやるから。 もう絶対、一人にはしねぇよ」
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6631人が本棚に入れています
本棚に追加