9.決断のとき

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大声で泣いた藤沼は、泣きつかれたのかまた眠ってしまった。 窓の外はすでに真っ暗で。 明日は休みだし、今日はこのままここに泊まることにする。 冷蔵庫を覗いてみたが、ほとんど何も入っていない。 仕方がないから外へ出て、適当に食べ物を買ってきた。 広い広いリビングで、一人黙々と弁当を食べる。 コタツが欲しいな。 日本人だし。 「センセー、……よかった」 目が覚めたのか、バタバタと藤沼が駆け寄ってきた。 泣きはらした目でうれしそうに俺を見る。 夜中、目を覚まして一人だったら、また泣くんじゃないかって。 そう思ったら帰れなかった。 「何か食うか?」 藤沼の好きそうなものをいくつか買ってきている。 特別に、今日は甘いもの付きだ。 「そういや携帯、玄関に落ちてたぞ」 ついでに鞄も落ちていた。 だから携帯繋がらなかったんだな。 「あ、あのさ、センセー……」 ラグの上に並べた食べ物に見向きもせず、藤沼の視線がすがり付いてくる。 どうした? 腹、減ってるだろ?
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