9.決断のとき

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俺の斜め前にペタンと座り、両手をついたまま俺を見る。 何か迷っているのか、視線が揺れてはもどってきて。 じっと潤んだ瞳で見つめられた。 なんていうか……犬だな、これは。 捨て犬に見られているみたいだ。 「どうした?」 頭をぐりぐりなでてやれば、一瞬驚いたように目を見開いて。 それからすうっと細められる。 気持ちよさそうな顔をするもんだから、なかなか手が離せなかった。 「センセー、俺……」 うん? 「俺、センセーのそばに居てもいいんだよね?」 そうだな。 「それって……、その、俺、俺と…………つき、あって、くれる……の?」 おそるおそる問われた言葉。 頭を撫でていた手がぴたりと止まった。 あぁ、そうだった。 言ってなかったな。 「俺は教師だし、おまえは生徒だ。公私混同はできない。 今日は事情が事情だから朝まで居るが、こういうのも無理だからな」 おまえが生徒でいるうちは。
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